解体前に知っておきたいアスベストの基礎知識
解体工事を行う前に必ず知っておくべき重要なポイントの一つが、アスベスト(石綿)に関する知識です。アスベストはかつて「奇跡の鉱物」とも呼ばれ、防音・断熱・耐火性に優れていたため、建材として広く使われてきました。しかし後に、その繊維が空気中に飛散し吸い込むことで肺がんや中皮腫、アスベスト肺など重篤な健康被害を引き起こすことが判明し、現在では製造・使用が禁止されています。
特に注意が必要なのは、昭和30年代から平成初期(およそ2006年)以前に建てられた建物で、壁材、天井材、屋根材、床下の断熱材、吹付け材、接着剤など、さまざまな部分にアスベストが含まれている可能性があります。これらの建材を誤って破砕・撤去すると、目に見えない微細な繊維が空気中に飛び散り、周囲の住民や作業員の健康に重大な影響を与えるおそれがあるため、解体前の調査と適切な処理が義務付けられています。
現在では、すべての建物解体においてアスベスト含有の有無を事前に調査することが義務となっており、石綿障害予防規則や大気汚染防止法に基づいた手続きが必要です。調査は専門の業者による目視・資料確認・サンプリング調査で行われ、アスベストが使用されていることが確認された場合には、自治体への届け出と、飛散防止のための厳格な除去工事が求められます。除去作業は防護服・マスク着用、負圧除じん装置の使用、飛散防止剤の散布など、国の定めた基準に従って行われます。
アスベスト除去には高い技術と安全対策が求められ、通常の解体費用とは別に数十万円から場合によっては百万円単位の費用がかかることもあります。ただし、アスベスト対策費用に補助金を設けている自治体もあり、対象となる建物であれば費用の一部が助成される場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。
アスベストは見た目では判断できないことが多く、知識のないまま工事を進めると、違法行為や健康被害、近隣トラブルにつながる危険性があります。解体前には必ず専門業者による調査を依頼し、安全で適正な手順で工事を行うことが、住環境と健康を守るために何より大切です。アスベストに関する理解と正しい対応が、解体工事全体の品質と信頼性を左右する要素になります。